「初代の願いをいまに、そして未来に」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―布教百二十年記念祭を迎えて―
　　　　　　　　　　　　
　今年、立教百五十年というお年柄に、芝教会は、初代・大場吉太郎師が、芝の地に教えの鍬を打ち込まれてより百二十年という節目の年を迎えさせて頂きました。本日、天地金乃神大祭に併せて、記念の大みまつりを、また、初代百十年二代四十年の式年のみ祭りも共にお仕えさせて頂きます。
　この百二十年の間、芝教会に一筋に貫かれてきたものは、ただ一つ、初代の遺された、ただ一つの教えでもあります、「ありがたし親神、かわゆし氏子」のご信心であったと思います。
　「ありがたし親神」とは、いま、こうして神様に生かされて生きている我が身に目覚め、それを喜び感謝する、ただ喜ぶのではない。喜びに喜ぶ、天にも昇らんばかりの喜びをもって…。そして、その神様にすべてをお委ねする、神様を信じて信じて信じ抜き、すがってすがってすがりきる絶対信の心境で、常に神と共にあり、共に歩む生き方をいいます。そして、「かわゆし氏子」とは、この思いを一心に神様に向けきっていった時、神様と一つ心になって、神心となる、「かわゆいと思う心が、そのまま神」とあるように、ただ氏子かわゆしの心、即ち、人の痛みを我が痛みとし、何とか助かってほしいと願って下さる神様の悲願を自分の願いとして、世に向かい、難儀を抱えた人を救い助けるみ業にわが心、わが身を捧げる行動をいうのだと思います。「ありがたし親神」は、このお道の信心の神髄であり、「かわゆし氏子」は、布教の根底をなすもので、一つに繋がったものといえましょう。
　そして、人々が助かっていくその姿を通して、また自分の中の神様が揺るぎないものとなって、（何が起きても、すべてお任せし受け入れ、乗り越えていける）安心の境地、即ち助かりの境地に近づいていくことができる、これがこのお道の助かりそのものだと思うのです。
　この安心、助かりの境地を目指して、「ありがたし親神 かわゆし氏子」の信心に少しでも近づかせて頂こうと、皆で話しあいのもと、昨年、布教百二十年に向けて新たに、芝教会モットー「神様の願いを現す私に 一人がひとりお導きを」、また、実践目標「頂いているおかげを自覚しよう」「神様に使って頂く私に」「人を助けてわが身助かる信心を」を立てました。そして、信奉者各々のところで、自分が助けられた喜びを人に伝え、このお道の信心によって助かって頂く、お導き・人助けの実践に取り組んできていることと思います。
　そこで、それらの実践を道づけていく手だてとして、この度、布教百二十年の記念行事として、「桂かい枝落語独演会」を計画し、去る四月十二日に開催いたしました。二年前から願いを立て、準備を進め、桂かい枝さんご夫妻の熱いご協力、また、東光合唱団の皆様、他教会の先生方、信奉者の方の大きなお祈りと応援を頂いて、無事約六百名の人々にご来場頂き、盛会裏に終えさせて頂きました。しかもその内、未信奉者の方が二百五十六名という結果を頂くことができました。このお道を知らない人々に、一人でも多く知って頂き助かって頂きたいとの願いで、一月よりその当日まで、毎週末、主に銀座歩行者天国にてチラシを配布し、また若いメンバーがインターネットを駆使して、また、個々の処でお誘いしてと、皆、各々の立場でアプローチし、よくがんばりました。それら皆の一生懸命の真心の御用、その姿勢に、親神様、御霊様が応えて下さったとしか思えません。この成功の結果をこの大みまつりにお供えさせて頂けることが何より嬉しくありがたいことです。
　そして、またこのような働きの中で、思いもよらなかったおかげを見せて頂きました。
　それは、昨年七月、四谷教会・戸田地根教会長がお国替えされて以来、後継者問題が浮上し、この問題に道をつけて頂かねば、この百二十年も乗り越えられないとの思いで、教主金光様、難波親教会長先生のお取次ぎを頂いておりました処、今年、お年柄の新年を迎えてすぐの一月はじめ早々に道をつけて頂き、準備も整えて、白金教会の和泉晃三師紀子師夫妻が、長女白ちゃんと共に、四谷教会に移り住み、四月十八日、天地金乃神大祭に併せて後継者のお披露目をし、新たな布教の出発を致しました。これからが楽しみです。また、この十年近くご縁を頂くことがなかった修行生に、横須賀教会の木本雅史氏が学院卒業後来てくれることとなり、手続きの教会からの修行生は初めてで、これもありがたいことでした。
こうして、百二十年のお年柄に初代の教えを頂いて布教された出社広前に生まれ育った若者たちのこのお道の布教に燃えて御用に向かう姿に、各々の教会の初代先生方の熱い願いが今も生き通しに生きている事を実感せずにはおれません。
　百十年から百二十年にかけてのこの十年の間にも、教祖様が遺して下さり、それを、白神新一郎師、近藤藤守師、そして、初代、大場吉太郎師、歴代教会長、また、先覚、先人、先輩信奉者たちが次々と伝え導いて下さってきた『教え』によって、我情我欲による苦しみから解放され、すべてをお委ねできる親神様との出会いによって、助かってきた人々がおられます。苦しみのどん底から喜びの世界へ、不安から安心へと、人生が百八十度変わっていく姿を目の当たりにしてきました。このような人々が次々と現れ、その助かった喜びの心で、道を伝え、多くの人々が助かってきた百二十年だったのです。
　現在、百年に一度の不況といわれる中に身を置く私達、周りには外見だけではわからない難儀を抱えている人がたくさんいます。不安渦巻く中だからこそ、初代先生が、この芝の地に開いて下さった助かりの道、どのような中にあっても、神様に真の心を向けていれば必ず道をつけて頂けるという「安心の道」を、今こそ伝え現す時だと思います。
　この百二十年を新たな出発点として、私たち一人ひとりが、「ありがたし親神、かわゆし氏子」の信心をめざして、しっかり神様に心を向け、信心の喜びに満ち、その喜びをもって、人に道を伝え、助かって頂くよう、「人を助けて我が身助かる信心」を実践し、初代の願いを今に現し、そして未来に伝えていくことを、大切な使命として心一つに取り組ませて頂きましょう。