神は、人の身の上にけっして無駄事はなされない　　　 　　　　　　　
―脳出血を体験して―

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　集中治療室にて
　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　
　皆さま、この度は本当にご心配をおかけし、申しわけございませんでした。私はもしかしたら、一つまちがえば、もう皆さんとお会いすることはできませんでした。こういう事は、突然やってくるのですね。十月四日の夜、プールで歩く運動をした直後、身体に違和感がありました。もしかしたらこのまま終わっていくの？と問うた時、思うように動けなくなり始めていました。そして覚悟しつつも、一刻も早く教会へたどりつき、できる限りのことをしなければと必死でした。カギを開けようとして、そのカギを落とし、拾ってやっと鍵穴に入れた時、中から修行生の井上先生が開けてくれました。無我夢中でご神前に一礼をして、「金光さま、助けて下さい」と祈り、すぐ三階へエレベーターで上がりました。
　リビングでアイロンをかけている主人に、「何か変。雲の上を歩いているみたい」というと、「すぐに救急車を呼ぶから」と言ってくれました。私は、何を持っていったら良いか考えましたが、支度することもできず、一階の談話室で倒れそうになりながら、イスに座って待ちました。しばらくして救急車が到着し、隊員の方が「虎ノ門病院へ向かいます」といった時は「もうおまかせするしかない。」と覚悟しました。でもなぜか、必ず生かして下さるような気がしたのは、不思議でした。
　救急処置室に運ばれ、「血圧２００」という若い医師の声がきこえます。「これ以上になるとキケンです」と言っています。
「これ以上にならなければいいんだ」と思い、祈りました。「金光様」「パパ、ママ、お母さん」長く感じました。
　MRIの中に頭を入れられ、長い長い時がすぎました。苦しくて一刻も早く、出たかった。でもここまでがんばったのだから、最後までがんばろう。
「ハイ終わりましたよ」の声をきいて安心しました。そのあと真剣に先生の話をきいている主人の姿をみて一安心。
「生きている」。エレベーターで上の階へ運ばれ、命のキケンがある人たちの部屋��集中治療室�≠ﾖ運ばれ、バタバタとベッドに移されました。落ちついた、と思ったら、常に看護師さん２、３人の監視のもとでカーテンは閉めてもらえない状態。１時間ごとに「お名前は？」「生年月日いえますか？」「何歳かわかります？」とっさに答えられない。「大場あけみ」「２４才」「エッちがう」「何歳？」「もうわからない」そんな世界です。起こされては何度も同じ事をきかれる」「両手を上へ上げて」「目をつぶって」「開けて」右手が下がっている、目を開ける、手を上げるのくり返し。もうほっておいて欲しい。ゆっくり寝かせて！悪夢のようでした。長い時間に感じました。もう早く夜が明けて欲しかった。
　しかし、後できくと、これをしないといけないのだそうです。その時は可愛い看護師さん達の顔が鬼のように思えました。転院のとき直接お世話になった方たちのところへ御礼にいったら、ちょうど、皆そろっていて、こんなに皆さん可愛いかったんだと思いました。それだけ、一生懸命やって下さったのです。
　そして、私は五日の朝を迎えることができたのです。神様、金光様、私は命を頂きました。ありがとうございました。パパ、ママ、お母さんありがとう。そしてカズさん（主人）ありがとう。
　カズさんの顔が見えた。救急救命室での様子を話してくれました。「神様がお命を下さったんだよ」と言われました。でも後で聞くと脳外科の先生は「深夜二時までにこれ以上出血しなければ大丈夫だが、何ともいえません」と言われたそうです。主人はどんな思いだったでしょう。病名は脳出血、詳しくは「左視床下部出血」脳幹に近く手術できないところで、ひたすら血圧を下げる薬を投与し出血を止める処置しか無かったそうです。助けて頂き、なんとありがたいことなのでしょう。
　やはり私は自分の身体を酷使していました。「早く寝なさい！人間の体力は無限じゃないんだよ。何があっても知らないよ」と真剣に怒って言ってくれる主人の言葉もちゃんと聞かずに、毎日寝不足もいいところでした。「いつかこういう事が起こる」と考えないではなかったけれど、「大丈夫」と過信もいいところでした。神様から頂いたお身体を酷使していました。ごめんなさい。感謝が足りませんでした。
　父が亡くなって二十年、がむしゃらに走ってきて今、思うようになかなか行かず、この二十年何をして来たのだろうと、焦りも感じていました。どこかで「自分が」という不遜な思いになっていたのかもしれません。もっと楽しんで御用させてもらわねばと今、改めて思います。「自分が」という思いがいけなかったのです。
　今、私のことを祈って下さっている金光様、親先生、信者さんたち、先生方、そして主人、妹たちとその家族、叔父、叔母、従姉妹たちみんな私にとってかけがえのない方々、人々にずっと祈ってきて頂いていることに改めて気付かされました。
　ご理解に、「神は人間を救い助けてやろうと思っておられ、このほかには何もないのであるから、人の身の上にけっして無駄事はなされない。信心しているがよい。みな末のおかげになる」と仰る教祖様の思いが伝わってきます。
　無謀な行いをしている私を助けて下さった、この度のことを心から感謝すると共に、すべてを末のおかげさせて頂く私に生まれかわらせて頂きます。
　新たな命を頂き、新たな気持ちでお取次の御用に取り組む所存です。これからもお祈り添えを宜しくお願い致します。

※この教話は教会長自らが書き上げました。十月の団体参拝の前日、皆さんに一言書きたいと言って書いた時は、ミミズのようで読める字ではありませんでした。このような文章が書けるようになるほど驚異的な回復をさせて頂いたことに心から感謝申し上げます。皆様にはご心配頂き、お祈り添えを頂き、本当にありがとうございました。　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宇都木員夫